中村ノブオ(Nobuo Nakamura, 1946-)は福島県三春町出身。東京写真専門学校卒業後、1970年に何もコネクションを持たずにプロの写真家を目指してニューヨークへ渡りました。写真で独立するという自らの強い信念が幾多もの幸運を呼び寄せ、広告写真家のアシスタントに採用されます。その後経験を積み、1981年にフリーカメラマンとして独立。1984に帰国し以降東京を拠点に広告やポートレートの分野で仕事を行っています。
中村がニューヨークで写真家の可能性を試すために行なったのが、当時は治安が極端に悪かった黒人街ハーレムでの写真撮影でした。ハーレムの街中で三脚を立て8X10”の大型カメラで行った撮影では、時には緊張で心臓の鼓動が聞こえ、冷や汗が流れることもあったそうですが、彼の作品のモデル達は皆リラックスしていて緊張を全く感じさせません。それどころか、彼らの穏やかな人間性さえ印象付けられます。またハーレムに住む人々のドキュメントは、1980年代のニューヨークの雰囲気、気分、スタイルをとらえた一流のアート系ファッション写真としても通用します。
1980~1984年に撮影された一連の作品はニューヨークの写真界で高く評価され、ブルックリン国立博物館、ニューヨーク市立図書館ショーンバークセンター、ニューヨーク市立博物館などでコレクションされています。また中村が1984年に帰国後、1985年に写真集『ハーレムの瞳』(築摩書房刊)としてまとめられています。
Popy the Boxer, Harlem, 1983
ⓒ Nobuo Nakamura 禁無断転載